Season4〈自分を説明する――自分語りの現在地と未来〉
哲学のシークレット・サービス(SSP)は哲学研究者・批評家の森脇透青のオンラインセミナーです。
現在、Season4〈自分を説明する:自分語りの現在地と未来〉(2026年10月〜2027年2月、全8回)の参加者を募集しています。
※ これまでのSSPと内容の連関はありませんので、どなたでもご受講いただけます。
お申し込みはこちらのフォームから
スケジュール
10/31(土):「自分を説明する」講義【1】導入
11/14(土):フーコー『性の歴史Ⅰ:知への意志』を読む【1】
11/28(土):フーコー『性の歴史Ⅰ:知への意志』を読む【2】(ゲスト:池田信虎)
12/12(土):バトラー『自分自身を説明すること』を読む
12/26(土):「自分を説明する」講義【2】自撮りと自分語り――セルフイメージの現在地(ゲスト:山内萌)
1/9(土):「自分を説明する」講義【3】
1/23(土):「自分を説明する」講義【4】なぜ自分を書くことは楽しいのか――私小説、エッセイ、ポッドキャスト(ゲスト:柿内正午)
2/6(土):「自分を説明する」講義【5】総括
※ いずれも19時から2時間程度の予定。時間は伸びる場合が多いです
概要:どこまで説明すればいいのか?
第4回のセミナーのテーマは、「自分を語ること」です。
私たちは、かつてないほど自分について語り、説明することを求められる時代を生きています。
SNSのプロフィールを書く。自分の考えを投稿する。就職活動で「あなたはどんな人ですか」と問われる。自己証明書類を求められる。恋人や友人に自分の気持ちを説明する。日記を書く。配信する。カウンセリングで過去を語る。自分の属性や立場を明らかにする。
私たちは説明や表明の渦のなかに生きています。「私はこういう人間です」と説明すること、「言語化」することはいまや私たちの日常の一部であり、趣味にも、ブランディングのための戦略にも、政治的な問題にもなりえます。
私たちは、なぜこれほどまでに過剰に自分について語るようになったのだろうか。この疑問が今回のSSPの出発点です。
自分を語ること、他人に説明すること、自分を見せること。それはいまの日常をどう形づくっているのでしょうか。そこにはどんな功罪があるのか、本当に「自分を説明する」ことなどできるのか、そこにポジティブな意味が見いだせるのか⋯⋯。
こうした問いを進め、問題の核心を掴み、「自分を語る」ことの現在地を未来を考えるために、講義はまず哲学的なテキスト読解から出発したいと思います。

出発点は、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの議論です。
しばしば、性的な事柄は、公開すべきではないもの、隠すべき秘密と考えられています。それゆえ、一定の政治運動や思想は、「現在の社会は性を抑圧している、だからそれを解放しなければならないのだ」、と考えました。
しかしフーコーは『性の歴史Ⅰ:知への意志』でむしろ逆の事態を想定します。たしかに性は抑圧されてきたかもしれない。しかし同時に、あるいはそれ以上に、社会はむしろ、性について語るよう要求してきたのではないか。
ここからフーコーは実にさまざまな場面を横断してこのことを分析していきます。懺悔室での告白、診察、教育、心理学、精神分析⋯⋯。私たちはさまざまな場所で自分の内側にある欲望や感情を言葉にし、「本当の自分」を言語化するよう求められてきたのです。
フーコーが警戒するのは、どこかに「自己自身」がいて、それが社会によって抑圧されることではもはやない。社会は人々に「本当の自分」を語るように強制し、あなたはあなたでありなさい、と要求してくるのではないか?
こうしたフーコーの批判的探究を、私たちは「自分について語ること」の系譜学として捉え、議論の軸としましょう。
なお、第三回ではゲストとして、フーコー研究者の池田信虎さんにご協力いただき、専門的な目線からもコメントをいただきます。
(なお、10月にちくま学芸文庫から文庫版が発売される『〈知への意志〉講義』も、読解の際に参考として用います。)

とはいえ、現在、私たちは、権力によって「告白させられて」いると言っても、なかなか体感と合わないかもしれません。私たちはむしろ自分から進んで日常を公開し、写真を載せ、好きなものを語り、自分が何者なのかを絶えず更新しているからです。「自己表現」はライフワークであり、自由の証であり、アイデンティティの表明であるようにも見えます。
「自分について語る」とき、実際に何が起きているのか? 事態をもっと間近から掴みとる必要があるでしょう。そこで、講義第四回では哲学者ジュディス・バトラーの『自分自身を説明すること』を読みます。

バトラーは、まさにフーコーを参照しながら「自分を語ること」を問題にします。
私たちは、自分について説明することができる。しかし、自分がなぜいまの自分になったのかを、最初から最後まで完全に説明することはできない。私たちが言葉を覚えるより前から、すでに社会があり、身体があり、歴史があり、他者がいる。バトラーは、語る「自己」そのものがどうやって誕生するのかを洞察します。
バトラーの議論は、「自己」の成立と「他者に向かって語ること」の関係を新しく解釈しています。自己を語ることは、私たちを自由にするのでしょうか。それともむしろ、「私はこういう人間だ」という説明のなかに、私たちを閉じ込めてしまうのでしょうか?
このような哲学的な問題設定を経て、講義後半ではより現代文化に議論を開いていきます。その作業は、ふたりのゲストとともに進めることにしたいと思います。
後半戦一人目のゲストは、山内萌さんです。
山内さんは、現在「人文ウォッチ」への出演などを通じて批評的な活動を行う一方、研究者としてはメディア研究・社会学の立場から、とりわけ女性の「自撮り」文化やSNS上の自己表現について研究してこられました。
第五回講義では、山内さんのこれまでの研究を手がかりに、自撮り文化の両義性について対話します。自分の身体や表情、服装、イメージ、背景などを通じて「私はこういう人間である」と示す自撮り文化を、現代的な「自分語り」の形式のひとつと捉えることができるかもしれません。
ここで、自分をさらすことは、自己表現や自由の可能性を広げるのでしょうか。それとも、私たちをこれまで以上に他者の視線や評価へと曝し、身動きをとれなくするのでしょうか。フーコーやバトラーを通じて考えてきた問題を、視覚文化的な実践の水準にまで引き寄せながら、そのポジティブ/ネガティブな含みを考えてみたいと思います。
後半戦二人目のゲストは、柿内正午さんです。
柿内さんは、会社員として働きながら、日記やエッセイを書き、ポッドキャスト「ポイエティークRADIO」の配信を続けてきた書き手です。『プルーストを読む生活』や『会社員の哲学』などの著作のほか、『随風』等の媒体でエッセイについての時評も手掛けています。
第七回講義では、柿内さんのお仕事を手がかりに、日記、エッセイ、ポッドキャストといった形式について対話します。柿内さんは時評のなかで、日本文学における「私小説」から現代の「エッセイブーム」にまで続く連続性のことも意識されています。「自分を書くこと」は、文学の形式や読者との関係によって作り変えられてきた実践でもあるでしょう。ここから、「自分を書くこと」の現代的な可能性を考えてみたいと思います。

今回に限りませんが、SSPでは「初心者も専門家も興味が持てる内容」を目指しています。ごく初歩的な解説を毎回行いますが、「ことがらとして難しいこと」はその難しさを伝えるよう努力しています(哲学的な事柄はあまりに身近に噛み砕きすぎてしまうと力を失ってしまうからです)。これまでのSSPでは、哲学に入門したい人、アートやクリエイティブに興味がある人、院試に向けて勉強したい人など多種多様な属性・職業・年齢層の方々が参加していました。
「わかりやすく難しい」、そんな思考のエンターテイメントを求めるすべての人にSSPは開かれています。
こんな方に向いています
哲学を基礎から学びたい、哲学的なテーマに関心がある
哲学的な文章の読み方を体得したい
哲学史・思想史を学びたい
現代の文化事情を知りたい
エッセイを書いてみたい
日本の批評・思想に関心がある
現代生じていることを新しい視野から理解したい
講義の進め方
120分×8回(ほぼ隔週)
YouTube Live(限定リンク)で実施します。
リアルタイムで参加できない方にもアーカイブと資料を共有します(セミナー用のDiscordにて)。
基本的には森脇の講義形式で進めますが、コメントには適宜反応します。また、まとまった質問についてもフォーム内から受け付けます。リアルタイム参加される方は、口頭で森脇やゲストに質問することもできます。
Season4 参加申込方法(10/24〆)
受講料
¥30,000
学生料金:¥20,000(自己申告)
申込フォーム・受講までの流れ
1、まずはフォームに必要事項を記入してください。(10/24まで)
※ ssp.toseimoriwaki@gmail.comからのメールが届くようご設定ください。自働返信のメールが届かない場合は、メールアドレスが間違っているか、迷惑メールに振り分けられている可能性があります。
2、自動メールで振込先の口座が通知されます。10/27までに受講料をお振込ください。
3、10/26以降、お振込の確認メールが届きます。そちらのメールで、セミナー用のディスコードにご招待しますので、しばらくお待ちください。
※読書会についてのお問い合わせは、専用のメールアドレス(ssp.toseimoriwaki@gmail.com)でお受けしています。
みなさまにお会いできることを楽しみにしております!